彼と私のお伽噺
小学生の頃からどこか高慢で偉そうな子どもだった彼は、あまり同世代の子どもと遊ぶことはなく。
いつも私が彼の遊び相手に──、というか、おやつやジュースを部屋まで運ばされたり、散らかった部屋を片付けさせられたり、必要な学用品を買いに行かされたり。主に、パシリとして使われていた。
昴生さんにとって、年が近くて命令すれば何でも言うことを聞く私は、体の良い下僕みたいなものだったんだろう。
大きくなるにつれて、自分が昴生さんにいいように使われていることには気付いていたけれど、私は彼から離れなかった。
片親だった母を早くに亡くしていた私は、小さい頃からイジメられることが多かった。そんな私をいじめっ子から助けてくれたのが昴生さんだったからだ。
助けてくれたときの彼の物言いはものすごく偉そうだったけど、当時小学生だった私を庇っていじめっ子たちの前に立ちはだかってくれた昴生さんの背中はかっこよくて。王子様みたいに見えた。
そんな彼も、大学卒業後に父親が経営するTKMグループに就職してからは、一人暮らしを始めた。
社会人になった昴生さんが鷹見の実家を出て行って以降、私は彼とは会っていない。
かれこれ一年ぶりの再会だということもあって、一瞬誰だかわからなかっだけれど……。