彼と私のお伽噺
喪服とはいえスーツを身に纏った昴生さんは、学生時代の彼と比べて大人びていて、かっこいい。
子どもの頃から綺麗な顔をした男の子ではあったけれど。それにしても、見違えるほどだった。
「昴生さん、どうしてここに?」
ついうっかり気が緩んで「コウちゃん」なんて昔の呼び方をしてしまった私は、背を伸ばして言葉遣いを改めた。
「俺も、葬儀に出てたから。残念だったな、矢木さん」
昔から私には偉そうな態度で接してくる昴生さまが、珍しく静かな声音でそう言って目を伏せる。
「そうですね。でも、もう年も年だったし。一年前に鷹見家でのお仕事を完全にやめて以来、目に見えて弱ってきてたから、覚悟は決まってたというか……」
最初は愛想笑いを浮かべながら話していたはずなのに、昴生さんを前にして緊張が解けたのか、途中から急に涙が込み上げてきた。
「すみません。私、ひとりになっちゃって。これからどうしたらいいんでしょう……」
昴生さんにそんなことを言ったって仕方ないのに、不安でどうしようもなくて、弱音を吐かずにいられなかった。
俯いて目元を拭っていると、昴生さんが私の前で膝をついて、肩を抱き寄せた。
優しい仕草にドキッとする私に、彼がさらに驚くような提案を持ちかけてくる。