彼と私のお伽噺
三人でオフィスに戻る途中、ドラッグストアの前を通りかかる。
その看板を見た山里さんが「あ」と、何かを思い出したように立ち止まった。
「すみません。ちょっと買い物してから戻ります。部長と矢木さんは先に会社に戻っててください」
「買い物って、会社の備品関連ですか?」
「給湯室に置いてるペーパータオルがなくなっちゃってて。注文はしてるんだけど、まだ届いてないから念のために何個か買っとこうと思って」
「だったら私も……」
一緒についていこうとしたら、山里さんが笑顔でやんわりと首を横に振った。
「大丈夫。パッと買い物してすぐに戻るから。矢木さんは、戻って先に仕事始めてて」
「わかりました」
私が頷くと、山里さんはドラッグストアのほうへと速足で歩いていってしまった。
「そういえば、機会があれば聞いてみようと思ってたんだけど、矢木さんってハーフ?」
山里さんが買い物で抜けたあと、隣を歩いていた戸崎部長が不意にそう訊ねてきた。
戸崎部長に横から覗き込むようにジッと目を見つめられて、ドキッとする。
大人になってからは人から指摘されることがだいぶ少なくなったけれど、私の目は碧《あお》みがかったグレーだ。髪の毛も、色素が薄くて地毛で茶色い。
戸崎さんに聞かれたとおり、私は日本人の母とヨーロッパ系白人の父親とのハーフらしい。
「あ、はい。そうみたいです」
「みたい、って?」
私の曖昧な答え方が気になったのか、戸崎部長が不思議そうに首を傾げた。