彼と私のお伽噺



 昼休み。戸崎部長が私と山里さんのことを連れて行ってくれたのは、オフィスから歩いて五分ほどの場所にあるイタリアンだった。

 夜はコース料理が食べられるような敷居が高めのレストランだが、お昼はデザートとコーヒー付きのお得なプレートランチを提供しているらしく。このあたりで働くOLに人気のお店なのだとか。

 山里さんも、同僚と一緒に何度かランチに来たことがあるらしい。


「夜は単品で注文すると高くなるメニューが、ランチタイムだとちょっとずつ美味しく食べられてお得なんだよ」

 レストランのテーブル席で、山里さんが柔らかな笑顔をにこにこと振りまきながら教えてくれた。


「何でも好きなの頼んでね」

 戸崎部長にそう言われて、トマトソース系のパスタとチキンとサラダがのった今日のおすすめプレートを選ぶ。

 山里さんは同じくトマトソース系のパスタと魚のムニエルを、戸崎部長はクリーム系のパスタと牛肉がのったプレートをそれぞれ注文していた。

 上司との食事なんて緊張するものだと思っていたけれど、山里さんはいつものように癒しの空気を出して私を和ませてくれたし、戸崎部長も私たちにいろいろと話を振ってくれたから、一時間弱のランチタイムはとても楽しかった。

 もちろん、料理も美味しかった。


「ありがとうございます。ごちそうさまでした!」

 食事を終えてレストランを出ると、私は山里さんとともに戸崎部長に頭をさげた。


「どういたしまして。じゃぁ、午後の仕事に戻ろうか」

「はい」

< 33 / 105 >

この作品をシェア

pagetop