彼と私のお伽噺
「あぁ、それで。おばあさんが亡くなったあと、昴生が君のことを引き取ったんだね」
「そうなんです。身寄りのなくなった私の衣食住と教育費の面倒をみてくれるというので、つい————」
戸崎部長の話に頷いてそんなふうに答えかけたところで、ハッとした。
「ど、どうして戸崎部長がそんなこと知っているんですか!?」
TKMグループの御曹司である昴生さんとの同居は、誰にも言わずに秘密にしているつもりだった。
それなのに……、戸崎部長の口ぶりからして、彼は私が昴生さまの家に住まわせてもらっていることを知っているみたいだ。
青くなりながら、戸崎部長から一歩距離をとると、彼がふっと息を漏らして笑った。
「そんなに警戒しないでいいよ。別に矢木さんと昴生の関係を誰かに言いふらそうとか思ってないし。俺は昴生の兄の優生と友達で、軽く君の事情を知ってるだけだから」
「そう、ですか……」
そう言われても警戒態勢を崩せずにいると、戸崎部長が可笑しそうにククッと笑う。
「いや。矢木さんは覚えてないかもしれないけど、実は俺、もう何年も昔に小学生だった君のこと見かけてるんだよね」
「そうなんですか?」
そういえば今朝、昴生さんが、戸崎部長が高校生の頃に鷹見の家によく遊びに来ていたと言っていたような気がする。