彼と私のお伽噺
「うん。昴生のことは小さい頃から知ってるし、俺にとっても弟みたいな感じだから」
「そうだったんですね。昴生さん、小さい頃からあんなかんじですか?」
私が訊ねると、戸崎部長が笑いを堪えるように眉根を寄せた。
「そうだね。わりと生意気な子どもだったかも。だから同世代の友達はあんまりいなくて、鷹見家に遊びに行くと、優生や俺の後ろをよくくっついて回ってたんだけど……。あるときから綺麗な目をしたフランス人形みたいな女の子をいつもそばに置くようになって、それからあんまり付き纏ってこなくなったんだよね。その女の子が矢木さんでしょ? 昴生がずっと誰にも触らせないように囲ってたお姫様」
戸崎部長が意味ありげに口角を引き上げるのを見て、私は慌てて首を左右に振った。
「お姫様なんて、とんでもないです。私は鷹見家の元使用人の孫ですし、衣食住と教育費を支援してもらった見返りに、身の回りのお世話をしてる下僕みたいなものなんです」
「下僕……」
大真面目に話しているのに、何故か戸崎部長が盛大に吹き出して大笑いする。
「あぁ、なるほど。矢木さん的には、そういう認識だったんだ?」
「そういう認識でした……」
戸崎部長にそう返しながら、つい最近までは……、と心の中で付け足す。
そんな私を見て、戸崎部長はまだ可笑しそうに笑っていた。