彼と私のお伽噺
私は少し考えてから、向かいにあるコーヒーチェーン店に入った。
ホットのキャラメル・ラテを買うと、入り口側の席を陣取る。そこからだと、妃香さんの入ったカフェを外からよく観察できた。
あのカフェは席数が少なくて仕切りもない。店の中に入るとすぐにバレるから、偵察は外からするしかなかった。
キャラメルラテを飲みながらカフェの人の出入りを窺っていると、しばらくして若いOLさんがやってくる。
だけど彼女は、店のコーヒーをテイクアウトしてすぐに出てきた。
またしばらく待っていると、サラリーマンの二人連れが店に入っていく。
打ち合わせでもするのか、彼らは私が座っている場所からよく見える窓際の席に向かい合って座った。そのせいで、彼らの奥にいる妃香さんの姿が見えにくくなる。
邪魔だな。
少し眉根を寄せて、キャラメルラテを口に運ぶ。それをちまちまと飲みながら三十分ほど様子を窺ったけれど、二人連れのサラリーマン以降、カフェへの人の出入りはない。
不安になってあとをつけてきてしまったけど、妃香さんがこのオフィス街に来ているのはたまたまだったのかもしれない。
昴生さんのことを疑ったりして悪かったな……。そろそろ帰ろう。
偵察をしている間にすっかり冷めてしまったキャラメルラテを飲み干して、立ち上がる。