魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 だけれど、上層部、陛下やその周りの人間、天上民とかいう立場の人は、外にはもうモンスターはいないということは知っているのだろう。
 それなのに、結界を解かない理由。
 権力を握り続けるためだ。
 中にいる人間は特別だと。外に出された者たちは自分たちより下の人間だと。
 外での暮らしはひどいものだと。モンスターに襲われて死ぬぞと。
 中で暮らしていたいなら言うことを聞け。そんなことをしたら外に出すぞ……みたいな、そういうために……。
 自分たちの地位を安定させるために、そのために便利な、外に出ることはできるけれど、外から中に入ることができない結界を維持し続けているんだ。
 ばかばかしい。
 なんで、犠牲にならなくちゃいけないのよっ!結界を維持しようなんてしなきゃ、魔力ゼロの人にも食べるものはいきわたったんでしょう?
 おばばさんが守りたくても守れなかった小さな命たち……。

 なんで、あんたたちの犠牲にならなくちゃならなかったのよっ!
「聖霊よ、逃げる人たちの退路を断って!」
『了解した。って、あれ?かわいいお嬢ちゃん、誰?シーマが変身したのか?ん~まぁいいや。後で話を聞かせてね~』
 え?
 今の、誰?
 真っ赤な髪をした、ちょっとチャラそうなお兄さんイケメン…が、真っ赤なマントを翻して街の中に飛んで行った。
 真っ赤なマント?
『なんじゃぁ、サラマンダーのやつ!どういうことじゃ、って、ユキ、その手の指輪』
 ああああっ、やっぱり、嫌な予感が、嫌な予感がしてたのよっ!
 仕方がない。
「逃げられると思っているの?降伏すれば攻撃はしないと言ったの。火の精霊サラマンダー様の炎で焼きつくされたい?」
 逃げていこうとした兵たちの後ろに、炎の壁が出現した。
「はったりだ、そんなもの、消せ!水魔法の得意な者たちで消し去れ!」
 陛下の声に、炎の壁に向かって水魔法を繰り出す兵たち。
『あはー。ちょっと精霊の力をなめてもらっちゃ困るというか、知らないのかねぇ、精霊というものを』
 街を覆いつくすような巨大な火の玉が空に出現した。
 煮えたぎるようなという表現をしたくなるような、なんというか、こう……ぱちぱち爆ぜた音を立てる焚火のようなかわいらしいものではない。
 何キロにもわたるような大きな、まるで太陽のような火の玉だ。
「火の精霊の力を見くびらない方がいいですよ」
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