魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 ディラにポーションのことを教えてもらおうと、ミーニャちゃんの方向に向けていた体を反転させ、剣を置いた側に視線を向け……。
 ふんぎゃーっ!
 目の前、ほんの30センチの場所に、ディラの顔!なんじゃ、イケメンが嬉しそうに笑っている。
『ユキと一緒に寝るなんて、恥ずかしいけど、嬉しいな』
 剣は確かに私の横に置いた。んだが、ディラは剣が寝かせられてようが立てられてようが、立っているはずなのに、なぜ、いま、寝転ぶ必要があるっ!
 そもそも幽霊に睡眠が必要なんて聞いたこともない。寧ろ、太陽が沈んでからがメイン活動時間だろう!
 楽しそうな顔してるディラにちょっとイラッとしてしまう。いくら幽霊といえども、こうして女性の横に平気で寝られる精神が信じられない。
 もしかしても、もしかしなくても、私のこと女だと思ってないよね?
 そりゃ、喪女だけど。女としても魅力に欠けるかもしれないけれど……。でも、平気で一緒の布団(布団なんてあるようなないような場所だけれど)で寝れちゃうほど全く女と意識されていないのは……さすがに、ちょっと傷つくんだよね。

『あれ?ユキ、どうしたの?怒ってる?』
 喪女のくせに、おしゃれしようとも思わない癖に、それでも女扱いしてもらいたいとか思う自分にも腹が立つ。でも、もしおしゃれしても女として見てもらえなかったらって、怖くて、怖くて……おしゃれしないことで保険をかけてたんだ。自分が変わることで隆の態度も変わるのが怖かった。怖くて、何も行動できなくて……。
 隆の女の座は手に入らなかった。けれど、幼馴染の座は失わずに済んだ。うん、だからいいんだ。いいんだ……。
『ねー、ぎゅーってしてもいい?』
 は?
 イケメンが私の顔を間近で見ている。眼鏡をはずしていても、霊の姿だけはなぜかよく見えるんだよね。
 半透明だけど、しっかりと表情は見える。なんだか、ちょっとドキドキして返事を待っている表情が。
 ぎゅーってなんだ?抱き枕にでもしたいのかと思ったけれど、そもそも幽霊って、人も物も触れないじゃん。通り抜けるじゃん。それくらいわかってて、何がぎゅー?
『こ、こんな気持ち……初めてなんだ……。ユキを見てると、無性に、だ、抱きしめたくて……』
「!!」
 まさか、金縛りに合わせる気なの?
 ニコニコ嬉しそうに、いい人ぶって、金縛りに……!
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