魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
 柄に手をかけ、剣をさやから引き抜く。
『抜けた。うわー、この感触、懐かしい』
 鞘を捨て、両手で剣を握る。
『うん、懐かしいな。片手では難しいあたり、子供に戻ったようだ。ネウス……もうちょっと鍛えたほうがいいよ……』
 そのまま、素振りを開始。
『にじゅう、にしゅいち……』
 うわー。たったの21回で手が震えてきた。
 寝ているユキの枕元に置いてある収納鞄から、ポーションを3本ほど取り出す。
『一口ゴクリ。ローポーションは激マズだけど、ポーションはそこまでひどくない』
 さ、回復回復。素振りをつづけるぞ。
 と、気がつけば、腕が上がらなくなるまで素振り、ポーション一口飲んで回復、再び素振りを、3本のポーションが空になるまで続けてしまった。
『いや、たかが素振りでも、楽しいな。徐々に振れる回数が増えていくこの充実感』
 40回は振れるようになった。スタートからほぼ倍だ。ふふふ、今後が楽しみだな。っと、そろそろ夜明けだな。目が覚める前に抜け出さないと。
 剣から離れれば抜け出せるんだよな。
 と、剣を置いて歩き出す。って、これだとまた抜け出した後にネウスが地面に倒れるよな。体を借りた上に、意識がないとはいえ痛い思いをさせるのは悪魔の所業だ。
 剣を持って寝転ぶ。
 それから、思いっきり剣をポーンと投げ捨てる。
『ひょーーーっ』
 剣がネウスの体から距離ができた瞬間、しゅぽんと飛び出たのはいいけど、ちょっと勢いつけて投げすぎた。ちょ、待って、やだ、ユキ~、ユキ~!
 皆が寝ている場所から、200mは離れてしまった。荒野にぽつん。……ど、どうしよう。
 ど、どうしよう……。


◆視点戻る◆
 目が覚めると、モモちゃんがじーっと私を見ている。
「あ、いきてたでしゅ!おばばしゃまにおしえてくるでちゅ」
 ……ああ、そうだ。
 そうだった。異世界に召喚されて、魔力がないからってすぐに捨てられたんだっけ。
 隣に寝ていたミーニャの姿はすでにない。というか、私以外、皆起きてるってことだよね……。
「ユキお姉さん、目が覚めたんですね。よかったです」
 ミーニャちゃんがやってきた。
 手には昨日作った即席の火を起こすための弓がある。
「もうすぐご飯ができます」
 にこりとミーニャちゃんが笑った。
「ご、ごめんね、寝坊しちゃったみたい……」
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