契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「そちらは綾奈さんのデザインですか?」
「私がデザインしたわけじゃなくて、うちのスタッフがデザインしたものなんです。サンプルなんだけど」

「とても素敵です」
「本当? 嬉しいわ。さっそくうちのスタッフにも伝えます」
 自社ブランドを愛している気持ちがとても伝わってくる。

 それを聞いて美冬は綾奈と仕事することになって良かったと思ったのだ。

 ミーティングについてはミルヴェイユのデザイナーでもある石丸に後を任せて、美冬は社長室に戻って自分の仕事をこなしてゆく。

 仕事に集中していると、ノックの音がした。
「はい?」

「社長、恐れ入ります、木崎様がお話されたいそうなのですが」
 秘書が顔を覗かせた。

 木崎、とは綾奈のことだろう。
「どうぞ、入ってもらって」
 しばらくして入ってきたのはやはり綾奈である。何やら社長室の入り口でもじもじしていた。

「綾奈さん! どうぞどうぞ」
 美冬は目の前のソファセットを勧める。
「失礼します」
 そう言って、綾奈はソファに座った。キョロキョロとしている。
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