契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「ミルヴェイユはとても素敵なブランドだと思っていましたけれど、やはり歴史のあるしっかりとした会社なんですねえ」

 社屋が古いんだよなぁ……。
「建物も古くて……。一応一階の店舗は何度かリニューアルして綺麗にしているんですけど」

「いえ! そういう意味ではなくて!」

 綾奈は背筋をまっすぐに伸ばした。そうして美冬に頭を下げる。
「この前のパーティでのことをお詫びしたくて。槙野さんがご婚約されたと聞いて、とても動揺してしまったんです」

「は……あ……」
 美冬としては回答のしようがない。槙野本人からもその話は聞いているけれど、それが今回の経緯に至った原因だとは綾奈は知らないのだろうから。

「母が……槙野さんを紹介してくれたんです。バーで、一目惚れでした。その時もお相手がいるようなことはおっしゃっていたんですけど、母は信じていないようでした。私はよく分かりませんでした。ただ、素敵な方だとそればかりで」
「すみません……」

 そんな打ち明け話を聞いて、美冬はつい謝ってしまった。なんでか分からないけど。
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