契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 ぎゅっとスーツを握った美冬の手元を見ている。
 分かるわよ。高級スーツなんでしょ。シワになったって知らないわよ!

「……待って……」
 つい、引き止めてしまった。

「なに?」
 緩く髪をかきあげた槙野は美冬を見る。

 その先美冬が口にする言葉なんて想像してもいないんだろう。
 小馬鹿にしているのか見下しているのか、身長が高いだけなのか、その全部なのか、上から見られて美冬は一瞬怯みそうになった。

 怖い!でも負けないからっ!

「するわ……」
「は?」
 いつも人を睥睨(へいげい)するような槙野の瞳が一瞬大きく見開かれた。

「するわって言ったのよ。契約婚、する」
「お前……なに考えて……っ」

「自分が言ったのよ! 責任とってもらうから」
 チッと舌打ちの音が聞こえて、美冬はその大きな身体に息もできないくらいに抱きしめられた。

「全くお前は……。覚えてろよ」
 え……と美冬が思う間もなく、情熱的に唇を塞がれる。
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