契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 祖父の口元は微笑んではいたけれどその表情は鋭い。

「あ……うん。社内で……」
「うん。顧問弁護士からも話を聞いてはいる。叱ってやるなよ? 昔からの付き合いなんだ。それに美冬が頑張っていた企画が危うかったこともあって、経営に関わる可能性があると連絡してきたんだ」

「そんな、叱るだなんてしないわ」
 ふむ、と祖父は腕を組んでいる。

「まあ、祐輔くんがいるから心配はしていなかったがな」

 美冬は隣に座っている槙野を見た。
 槙野は普通に澄ました顔で、お猪口を口元に運んでいた。

 到着してお勧めの酒があるからと祖父がすすめるので飲んでいるのだ。
 美冬は止めようとしたが、大丈夫だと笑顔を返された経緯がある。

 槙野の事なので、任せておけばいいか……と何も言わなかった美冬だ。

 槙野とは時折こういうことがある。
 特に何も言わなくても何となく伝わっているような感じだ。

 もしかしたら、ちょっとは気が合うのかもしれない。
(いやもう、すっごく合う! とかじゃなくて、ちょっとは! 他の人よりは!)
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