契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 ──何があっても絶対、後悔はしないわ……!
 それはまるで自分の心に刻みつけるかのように、そう決心した。
 美冬は顔を上げて笑う。

「じゃあやっぱりお互いにメリットがある、ということよね。お話は進めましょう」

 では割り切った関係であればいい。
 多分自分たちにはそのほうが向いている。
 結婚という言葉に浮き立ったり揺らいだりはもうしない。

 ──この人と契約婚する。
 美冬は心の中でそう決めた。

 その美冬の顔をみて、槙野は頷いた。
「分かった」
 そう言って槙野は足元のカバンから書類を取り出したのである。
 それを美冬に向ける。

『婚姻生活に関する事柄についての契約』

 真っ白な中にその文字だけ妙に浮き上がって見える。美冬がそれに手を伸ばすと、槙野がその上に自分の手を置いた。
 これでは見られない。

「なによ」
「その前に会社のことで伝えたいことがある」
 美冬は槙野の顔を見た。槙野の顔はとても真剣なものだ。
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