契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
レストランの丸いテーブルで美冬の斜め横に座っている槙野は美冬を真っ直ぐ見つめながら話をしてくれていた。
 真剣な気持ちが痛いくらいに伝わる。

 悔しいけれど、それは槙野の言う通りなのだった。
 いいものを作っていても販路がなければ意味がない。

 ミルヴェイユとしてはネットも含めて販売チャネルを拡大中だ。
ネット販売はもはや店舗での売り上げをしのぐほどになっているけれど、それでもファストファッションほどの店舗展開は難しいのが現状だ。

「木崎さんから業務提携の話が来ている」
 それはもちろん美冬にとって願ってもない話だった。

「この話を呑めば、業績が上向くことが予想されるし、こんなものは必要じゃなくなるかもしれない」

 契約書の上で美冬の手を握ったまま、とんとん、と槙野はその紙を指でたたく。
 社長を続ける条件は、結婚か業績改善なのだから。

 槙野は業績が上向けば契約婚など必要ないんじゃないかと聞きたいのだ。

 けれど美冬は今は、その手を……離してほしい。
「どうする?」
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