契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 それに槙野は割と好き嫌いがはっきりした性格でもある。美冬には好みじゃないと言ったけれど、気に入ってはいるのだ。

「そうだ。美冬、契約というのは二人だけの間の話でいいな?」
「うん。もちろん」
 目の前に立つ槙野を見上げて、美冬は頷いた。

 契約婚は海外ではセレブの間でも割とメジャーであったりはする。

 結婚前に契約を交わし婚姻するのが契約婚なのだが、日本ではまだあまりイメージがよくないし、そんなこと他人に公開することでもない、とは美冬も思っていた。

「……とは言え突然に結婚とかいうのも不審に思われそうだな。俺が一目惚れしたことにしておくか」

 あっさりと槙野がそんなことを言うから、美冬はどきんとしてしまった。

 そんな気持ちを押し隠してつい口をつくのは可愛くない言葉だ。

「好みじゃないのに?」
「俺の演技力にビビれよ?」
「大根じゃないことを祈るわ」

 演技力……一目惚れされたようなことを言われてもそれは演技ということなんだ。

 それだけは心に留めておかなくてはいけない、と美冬は思った。
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