契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 おばあさん的には最上級の誉め言葉だっただろうが、美冬は歌舞伎の隈取が思い浮かんでしまって笑いをこらえるのに必死だ。

──だって、似合い過ぎる!!

 それを見た槙野に美冬はほっぺたを軽く引っ張られた。
「ひゃん! なにすんのっ」
「お前の笑い方、たまに腹が立つのはなんでだろうなあ?」
「いやー誉められてたよ。誉められてたってば」

 ほっぺたを引っ張られて、さらに頭をがしがしと撫でられ、髪までぐしゃぐしゃにされる。

──もう!いじめっこか!

 そこで満足したのか、槙野にふん、と笑顔を向けられた。
 その笑顔に少しだけドキッとしたのは内緒なのだ。

 エレベーターを降りたところで身だしなみを整えて、二人は病室に向かった。

 今日は、槙野に祖父に挨拶をしてもらうのだ。
 病室の前で美冬は先ほどぐしゃぐしゃにされた髪を整えた。

 槙野も美冬に向かい合った。
「おい、チェックしてくれ。大丈夫か? ネクタイとか曲がってないか?」
「うん。大丈夫」
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