契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 まさか緊張しているのだろうか?
 何にも動じなさそうなのに?

「緊張する?」
「まあ、多少は? ここが一番のヤマ場だと思っているからな」

 それでも二人ともこの契約婚を失敗したくないのは共有の思いだ。
「応援してるし、私でできるフォローはちゃんとするから、頑張って!」

 そんな風に美冬に言われるとは思っていなかった槙野は、一瞬目を見開いた。
 そうして笑顔を美冬に向ける。
「おう!」

 どきっていうか、きゅんとした。
 やっぱり顔は意外と整っているかもしれない。無防備な笑顔……割とかわいいんだけど。

 美冬は息を整えて、病室の入り口のインターフォンを押す。
『はいはい』
 のんきな祖父の声が聞こえた。
「私、美冬」

『美冬か、入りなさい』
 美冬は引き戸を開けて中をのぞく。開けた扉は槙野が押さえてくれていた。

 大事なものを見るかのようなその瞳に勘違いしそうになる。
「ありがとう」
 美冬は槙野を見上げて笑顔を向けた。
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