契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「槙野さんってぇ、ほんっとにエラそう! 感じ悪っ」
「感じ悪くて悪かったな」

 そんなことは言われ慣れているのか、美冬を酔っ払いだと思っているのか、その両方なのか、槙野にはさらりと流される。

「なのに~、すっごく優しい時とかあるし、なんなのもう」
「ほら、美冬はもう水飲んどけ。付き合いもあるだろうにそんなんで大丈夫なのか? 普段は」

 美冬は気分がいいから槙野の呆れたような声にも腹は立たない。

「私はお付き合いはあまりないの。一人で行くこともほとんどないし。この前一緒にいた理恵さんと行くことが多いかな」
「そうか」

「槙野さんはいっぱいズルいわ」
「俺のどこが?」

「だって、おじいちゃんの前でも全然動じないし、そんな有名な人なんて全然知らなかった」
「知る必要がなかったんだろう」

「それに、エレベーターのおばあさんにもすごく優しいし……」
「うちには年寄りもいたからな。子供の頃からの習慣だな」

 お年寄りが身近にいる環境。槙野の実家というのが想像できない美冬だ。

「ふーん。じゃあ、今度ご挨拶の時会えるの?」
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