極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~

2.初恋は潮騒とともに - side ショウ -

 マリカという少女を知ったのは俺が十一か十二のころのことだ。

 父と弟の将生と三人で、夏休みを使ってセレブリティクイーン号に乗船した。その船上での出逢いだった。
 旅行自体への期待はほとんどなかった。なぜなら『海運王』と呼ばれる海堂家の長男として豪華客船の旅を体験することは、将来経営者になるための課題のようなものだったからだ。

『Nice to meet you. Your name, please?』

 初めて会った時、俺はマリカに英語で名前を聞いた。
 表面上はフレンドリーに笑って。だが、一定の距離以上には近づかせないぞという冷たさも漂わせながら。

 俺は日本人同士だからといって特別に仲良くするつもりはなかったし、とっさの質問にどの程度の反応を返す子供なのかを試そうと思った。
 子供同士の関係でも、そういう大人の予行演習のような駆け引きをするのが常だったのだ。

『Hello, my name is Marika』

 まだ五、六歳くらいの少女だったマリカは物怖じせずに、にこっと微笑んで綺麗な英語で返してきた。
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