極上御曹司に見初められ、溺愛捕獲されました~一途な海運王の華麗なる結婚宣言~
 飛行機なら数時間の行程をわざわざ八日間かけて船で行くのだ。乗船しているのは、時間のある人、記念日を祝う人、それからクルーズの旅自体が好きな人だろう。

 あと、ほかに目的がある人もいるにはいる。
 たとえば、わたし。

 わたし、光井(みつい)鞠香はもうすぐ就職して一年になる二十三歳。東京にある旅行代理店に勤めていて、この春からは少し大きめの営業所に異動が決まっている。
 今はようやく取れた長期休暇で、念願のクルーズ船に乗船中。

 大学時代からアルバイトをかけもちして資金を貯め、年に一度は海外旅行をしてきたけれど、今回クルーズ船に乗ろうと思ったのは、将来クルーズの旅を扱えるようになりたいからだ。
 そのために、いろんな経験を積んでおきたい。

「憧れの北大西洋航路かぁ。わたし、ほんとにセレブリティクイーンに乗ってるのね……」

 数あるクルーズ船の中でも北大西洋航路を選んだのは、この航路が世界で初めて豪華客船が就航した航路だからだ。
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