離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~

 そして今日、休暇を取った凛音は結婚生活を始めるため、暁斗が元から暮らすマンションへの引っ越しを行った。
 契約結婚を決めてから1ヶ月ほど、本当にあっという間にここまで来てしまった。
 
 病院からの呼び出しがいつあっても良いようにと九王に赴任した時に購入したというこのハイグレードなマンションは、病院からも駅からも近く、セキュリティも万全だ。各部屋広々設計の3LDK、凛音が一人転がり込んでも何の問題もなさそうだ。

 作業を終えた引っ越し業者が出て行くと入れ替わりのように外に出ていた暁斗が帰って来た。

「剣持先生、お帰りなさい」

 玄関まで出迎えて声を掛ける。お帰りなさい、と言うのが何だか気恥ずかしく感じでしまったが、そんなことを言っていたらこの生活は続けられない。

 今日ふたりは婚姻届けを提出し戸籍上夫婦となった。

 普通のカップルなら何かしら入籍日にこだわったりするのかも知れないが、自分たちは何も意識する必要が無いので、たまたま今日休日だった暁斗が一人で役所に行って提出してくれたのだ。

「婚姻届け、ありがとうございました」
「提出するだけだからすぐだった――もう片付いたのか」
「はい、ほとんど業者さんがやってくれたので楽でした」

 引っ越しと言っても荷物は元々あまり無い上、暁斗が手配してくれた引っ越し業者が荷造りから荷解きまで全て行ってくれたため、ほとんど凛音がやる事は無かった。
 さすがセレブ御用達の業者だ。手際もマナーもが素晴らしかった。
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