離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 遼介はカっと赤くなると同時にガタンと椅子から立ち上がった。
 普段はこんな風に感情を出すタイプでは無いのに、よっぽどグサリと刺さったのだろう。

「ちょうどいいじゃ無いか、これを機にお姉さんに甘えるのをやめて、独り立ちした方がいい」

 こちらも辛辣だが、暁斗の方が何枚も上手だ。非常に落ち着いていて、まったく動じる様子が無い。
「君の通っている山海(さんかい)大は俺の母校でもある。学生寮に入れるようにこちらから手配しておこう」
「ありがとうございます!それなら安心ですね。遼介を独りでこの家に残すのは心配だったので」

 願っても無い話だ。寮なら大学にも近いし便利だ。今まで以上に勉強にも打ち込めるようになる。

「遼介、私の事は心配しないで。あなたは立派なお医者様になれるようにこれからも頑張って」
「姉さん……」
「これで何の問題も無いな」

 終始淡々としている暁斗を遼介は睨みつけていたので、凛音は『この人あなたのスポンサーだから!』と内心かなり焦った。

 恐らく暁斗も気づいていただろうが、大人の態度でスルーしてくれていた。
 遼介が納得しようとしなかろうと彼の為に凛音は剣持家に嫁がなければいけない。一時的にしても。
 それから数日掛けて何とか遼介を説得し、凛音は引っ越し準備を始めるのだった。
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