離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 博美に『お医者さんの奥様は大変ねー』と言われているが、元々誰かの世話を焼くのは好きな性格だし忙しいのも苦にならない。

 未だに病院内で凛音の事を好奇の目で見る人間もいるが、もう慣れてきた。
 あの後、水上達から突っかかられる事も無かった。

 暁斗との関係も概ね良好、会話をする機会も増え、ふたりでいる事に違和感は感じなくなっていた。

 そんな忙しくも充実した日々の中、『次の日曜、買い物に行かないか?』と暁斗に誘われたのは10月に入ってすぐ、衣替えをする頃だった。

 秋冬の服が無いから、という彼にどこに行くのかと聞くと『銀座でいいだろう』という答えが帰って来た。

 妥協して銀座、みたいな言い方をしないで欲しいと銀座でウィンドーショッピングすらしたことの無い凛音は思ったのだが、当日はワクワクする気持ちを抱きながら彼の運転する国産高級SUV車の助手席に乗り込んだ。

 スーパーで買い出しする時は車を出してくれるのだが、短時間だし日常の延長だったので、こうして休日の朝からふたりで出掛けるのは初めてだ。

(これって何だか、デートに行くみたい)

 生まれてこの方、父や遼介以外の男性とふたりで街に出かける事なんて無かった。ソワソワする気持ちで運転する暁斗を見る。
 一日非番で病院からの呼び出し待機も無いという彼はいつもよりリラックスして見えた。
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