離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「銀座はあまり行った事は無いのか?」
「あまりというか、行った記憶が無いです。テレビで見たことがある位で」

 東京の生まれではあるが、子供の頃は買い物と行っても車で行ける郊外型のショッピングモールが中心だったし、母が亡くなってからは家族の事を優先にしていたので、自分の為に都心の繁華街でショッピングを楽しむという言う発想すら無かった。

「そうか」

 他愛の無い話をポツポツと交わしながら到着したのは高級で有名な老舗デパートの駐車場だった。
 
 さすが剣持家のご子息はこういう所で服を買うんだな、などと思いながら車を降り、暁斗について歩く。
 暁斗は深みのあるボルドーのカットソーにカジュアルなラインの黒いテーラードジャケット、細身のパンツを合わせている。

 とてもこなれていて、店内の高級な雰囲気にも嫌味なくなじんでいる。一方凛音はボートネックのブラウスに細かい黒をベースにしたグレンチェックの広がり過ぎないAラインのスカートにグレーのカーディガンを合わせている。
 無難ではあるが地味な服装で、何となく気後れしてしまう。

「……暁斗さん、ここってレディースフロアですよ?」
< 70 / 170 >

この作品をシェア

pagetop