背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜

特別

 尚政は尋人の父親の会社でインターンとして働きながら、忙しく過ごしていた。やり甲斐もあるし、尋人と過ごせることが楽しい。

 ただ一つ、一花のことだけはどうすることも出来ずに、忙しいのを言い訳に避けていた。

 恋人ごっこなんて言って、ちょっと浮かれてたんだ。一花が煽るから、つい口が滑ってしまった。

 一花以外の人を好きにならないなんて、なんで言ってしまったんだろう。

 一花を前にして、理性が働かなくなる瞬間が生まれ始めていた。帰りのキスがいい例だ。ただ唇を重ねるだけならいい。湧き上がる衝動を抑えられず、あんな貪るようなキスをしてしまった。

 このままだと、衝動的に一花を貪欲に求めてしまう。

 恋人は作らないと決めた。一人が楽だと自覚したじゃないか。それなのに一花に対して抑えられない衝動が駆け巡り、彼女を自分のものにしたくなる。

 一度距離を置いた方がいい。彼女を傷つけないように、そして俺が傷つかないように……。
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