天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 定年を前に『疲れたからのんびりしたい』という彼らしい理由で早期退職することになり、その日業務のないパイロットたちが集まり送別会を開いたのだ。

 場所は日本酒がおいしい和食料理屋だった。
 畳敷きの個室に集まったのは、機長や副機長合わせて六名ほど。
 その中には芦沢の姿もあった。

 堤機長を中心にして、思い出話をしながら食事をする。

「矢崎くんがOJAに入ってきたときは感心したよ。まだ若いのにこんなに操縦技術が高くて有能なパイロットがいるのかって」

 堤機長にそう言われ、「ありがとうございます」と頭を下げる。

「無駄な謙遜をしないところも、すごく好ましい」
「生意気な若造がとおっしゃる方もいますけどね」
「そういうやつはね、放っておけばいいんだよ。なにかあったときに乗客の命とすべての責任を背負うのは、パイロットなんだから。自分に自信が持てない人間にはできる仕事じゃない」
「重たい言葉ですね」
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