天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
『鐘は悪いものを追い払い、幸せを呼び込む平和の象徴よ』

 もしこの鐘にそんな力があるのなら、私の幸せはいらないから翔さんを助けて。
 誰ひとり犠牲者が出ないように守って。

 私はその小さな鐘を握りしめながら、モニターの風力計の数値を見る。

 どうか、収まって……。

 そのとき、風力計の数値が収まってきた。

「あ……っ!」

 まるで祈りが天に届いたかのように、みるみる風が弱くなっていく。

「蒼井さんの予想どおり、風がやんできました!」

 富永さんが嬉しそうに声をあげる。

「これなら着陸できる!」

 管制室にほっとした空気が流れた。

 下降気流は消え、同時に雨も収まっている。もう、大丈夫だ。

「OJA212便。こちら管制タワー。ダウンバーストが消えました。滑走路34Lに着陸を許可します」
『管制タワー。了解』

 その応答とともに、滑走路の向こうに212便の機影が見えてきた。

 風は止んだけれど、まだ安心はできない。

 212便はエンジンが一機止まっている。
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