天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~

 差し伸べられた手に恐る恐る触れると、ぎゅっと強く握りしめられた。
 その感触に心臓が跳ねる。

「昼食は済ませたか?」
「いえ、ひとりだとあまり食べる気になれなくて……」

 せっかくフランスまで来たのに観光もせず食も楽しんでいないなんて。
 我ながらすごく無駄な時間を過ごしていたなと恥ずかしくなる。

 けれど彼はそんな私にあきれることなくうなずいてくれた。

「そうやって塞ぎこんでいたら、腹も減らないよな。少し歩くか」

 翔さんは私の手を引いて歩き出す。

 手をつながれてる……!と動揺したけれど、周りを見れば腕を組んだり腰を抱いたり、当たり前のようにキスをするカップルがたくさんいた。

 いい大人が手をつないだくらいで緊張しているほうが恥ずかしいかと思いなおす。

「あの、翔さんはフランスに住んで長いんですか?」
「いや。仕事で海外に行くことは多いが、住んでいるのは日本だ」

 その答えに驚く。


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