天才パイロットの激情は溢れ出したら止まらない~痺れるくらいに愛を刻んで~
 搭乗訓練というのは、管制官が航空機のコックピットに乗せてもらい、パイロットの仕事を見学する訓練だ。

 パイロットがどんなふうに管制と交信し、機体を操縦するのか理解を深め、どのように指示を出せばスムーズなやりとりができるのか学ぶことが目的だ。

「どこの便でしたっけ」とたずねた富永さんに、主幹が答える。
「OJAの新千歳便だ。もちろん日帰りな」

 OJAと聞いてずきんと胸に痛みが走った。

 オリエンタルジャパンエアライン。
 元恋人の尚久が務める航空会社だ。

 一瞬、尚久の搭乗する便だったら気まずいなと思ったけれど、新千歳への便は利用者が多いから、尚久の操縦する小型機ではないだろうと思いなおす。

「えー。せっかく北海道に行くのに、日帰りなんてありえないですよ。主幹、一泊に変更してください」

 富永さんの主張に、武地主幹は「そんな余裕あるわけないだろ。こっちはいつだって人手不足なんだよ」と苦笑いする。

「えー、ケチー!」
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