スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜
私は頷き、口を開く。
「でも舞台上だとアジア人ってことは分かるかもしれませんが、私だってことは分かりませんよね」
「うん。……俺さ、実はそのとき初めてバレエを観たんだけど、正直全然分からなくて。……でも、紗雪が出てきて──なぜか目を奪われたんだ。主役の人よら誰よりも。だからすごく印象に残ってて」
真っ直ぐな言葉に私は視線を落とす。
足をつけた白いお湯からはふわりと湯気が立ち上っていた。
「そのときまるで空を飛んでるみたいだ──天使なんじゃないかって…………いい歳ながら、そんなこと思ったよ。足が地面から離れてふわふわと飛んで……あの子は羽が生えているのかなって」
「……っ」
「それが紗雪の主治医になる2年前のこと」
2年前といえば紗雪が初めて役をもらった頃と同じだ。
もしかして啓一郎さんはそのときの舞台を観てくれたのかもしれない。
あまりにも臭い言葉だったが、啓一郎さんが口にすると自然なのは何故なのだろうか。
私は心臓の高まりに息が苦しくなった。
「なんか……啓一郎さんに舞台の姿を観られていたって知ると少し、恥ずかしいです」
「俺はどんな紗雪のことも見たいけどね。例えば──俺の言葉に照れて真っ赤に染まった紗雪の顔、とか」
そう言って啓一郎さんは私の顔に手を添える。
私は誰かに見られてしまうんじゃないかと焦り、周囲を見渡す。
「大丈夫、今は誰もいないよ」
甘く囁き、私の長い髪を耳にかける啓一郎さん。
どくんどくんと強く跳ねる心臓の音が啓一郎さんにも聞こえてしまうのではないか、そう思った。
「可愛いよ、紗雪」