こんなにも愛しているのに〜私はましろ
私が何となく想像していたことよりも、
重い出来事の話で、どこの話だろうというほど、とてもじゃないが
年齢など関係ない、犯罪の匂いすらすることだった。

「西澤さんが、達を連れに行っている間、言われた。
これで終わるなんて思わないで。
あの画像、まだ手元にあるからねって言って、見せられたんだ。」

恐喝、、、

「お金も欲しいけど、あんたたちというサラブレッドと付き合うって
旨味も欲しいのよ。
冗談じゃないって思った。
声にも出したよ。二度と現れんな!って。

そうしたら
そんな大声を出して、周りに気づかれる方がヤバいんじゃないって。
自由な学校だから、他校の彼女が来ても文句も言われないんでしょ?
先輩が言っていたから、、、ほら、腕を組んで仲良さげにしようよ。」

「相手が1枚も2枚も上手なのね。
警察に言えば良かったじゃない。そして親から半殺しの目に遭う方が、どんなに
良かったか。」

二人の不甲斐なさと、相手の悪質さに私は西崎くんにそう言った。

「そうなんだ、、、
相手が想像以上で、、、

そこに達を連れて来てくれて、達は例の画像を見せられて真っ青になって
何も言えずに固まって、そうこうしているうちに国松先生が来て、
それでも怯まなかった、あいつたちがすごくって、、、

俺はもうこれしかないと思って、あいつらのスマホを取り上げて
例の画像を先生に見せて、これで、恐喝されていますって
言ったんだ。」

追い詰められて、ここでやっと救いを求めたってわけだ。

「あっという間に逃げ出したあいつらのうち、2人を先生が捕まえて
俺らと一緒に引きずるようにして、ミーティング室に連れて行って、
鍵をかけて逃げられないようにして、あいつらの学校にも連絡をして
まずは引き取りに来てくれと、、、

それから事情聴取が始まって、、、あとは、翌日結局
お互いの家に知れて、達は国松先生が止めに入らなかったら
爺様に殺されていたかもしれない。

俺は、親父から思いっきり拳で殴られて、母親からは泣かれて
兄貴からは貸したお金の利息を思いっきりつけられて、馬鹿じゃないのって
軽蔑されて、、、」

「それは当たり前の結果だと思うけど、それであの人たちはどうなったの。」

「もう二度と、俺たちには関わらないということと、あいつらの処分は
相手学校に任せるということで、終わった。
達は、殴られて起き上がれないので、一応謹慎ということになっている。

国松先生のおかげで、ようやく終わった。先生からは、俺ら引っ叩かれたけど
大人を頼れ、ひよっこのくせして。って言われた。

あのとき、咄嗟のことなのに国松先生に声をかけてくれたことを
感謝している。

迷惑ばかりかけたけど、、、ごめんな。」

額に汗しながら、蒸し暑くなった教室で、西崎くんはそう言って
私に頭を下げた。

「言いがかりもいいところで、迷惑以外の何でもなかったけど
国松先生がいい先生でよかった。

弁護士がいるなら、いい弁護士知っているからまた声をかけて。
これ以上何もないことを祈っているけど。

手塚くんは2学期からは学校に出てくるの?」

「あぁ、国松先生から馘をかけて救ってもらっているんだから、
誹謗中傷の真っ只中に突っ込まれたとしても、ちゃんと高校生活は
送らないと、、、」

国松先生の馘、、、
私が知らない話はたくさんありそうだ。

「初め、俺たちのことを知らないって言ったのは、あいつらから
とんでもない道を知らされたからだろ?

俺、あの坂を登る西澤さんの後ろ姿を見て、あいつらの悪巧みに
気づいて、達に何で止めないってひっぱたいて、追っかけたんだ。

いいところじゃないから、、、」

その西崎くんの話から、私は蒸し暑かった部屋の温度が一気に下がって
行くのを感じた。

「そのせいで、大変なことになったみたいで、、、」

「父の不倫現場に遭遇して、まさかの娘との修羅場、、、」

「いやっ。。。」

思いがけないほどの私の地を這うような声に、西崎くんが思わずたじろぐ。

「そのきっかけになった、あなたたちだから、なかったことにしたかったの。
あんな父の娘だよ。。。私は。
だから、これからも用事がない時は話しかけないでね。」

私はこれ以上彼と話す気もなく、教室を出て行った。

「ごめん。。。違うんだ。謝りたくって、、、俺、もちろん誰にも言って
いないから。ごめん。。。」

焦ったような西崎くんの声だけが、私を追いかけて来た。
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