こんなにも愛しているのに〜私はましろ
私は夜勤明けに家に真っ直ぐに帰らず、この日はお休みだと言っていた
美郷ちゃんの部屋へ寄った。

美郷ちゃんは、夜勤明けの疲れだけではない、私の酷く疲れた様子に驚きながらも
部屋にあげてくれ、温かな朝食を作ってくれた。

「美郷ちゃん、呼吸器科の安西先生と陸の噂を知っている?」

瞬間美郷ちゃんの目が開いた。
美郷ちゃんは産婦人科のナースだが、いろいろと聞いてはいたのだろう。

「知っているんだ。。。」

「噂だよ。
陸都先生はましろちゃん一筋だから、安西先生とは、何でもない。

それでは安西先生のプライドが許さないから、自分で怪しい雰囲気を
作っているだけだと思うよ。
これは手塚先生も言っていた。」

「手塚くんもって、、、美郷ちゃん、手塚くんと付き合っているの?」

「付き合っていないよ。ああいうチャラ男は、タイプじゃないから。
でも、どこかしらで私の休憩時間を見計らったかのように、現れるのよね。

その時に、この噂がとても気になったから、尋ねてみたの。

ましろちゃんは大丈夫?この噂が原因?」

私は彼女に夜勤中にあった出来事を、話した。全て、、、

「あの子かぁ、、、研修中も問題児だったんだよね。でも、彼女のバックが
強力で、ここで本採用になっちゃって。。。
どの科にも引き取り手がいなくって、、、

ほんの一部には、面白がられているけど、大部分はいい加減にして、、、という
タイプ。

あんな子がいうことを気にしちゃダメだよ。」

「私もそう思うけど、陸の態度が。。。。」

「安西先生の一人相撲。
だったら、なぜ、陸都先生が毅然とした態度を取らないの。って
手塚先生に聞いたら、

陸都先生が、高校の時ストーカーにあって、その女の子を壊してしまうくらいに
邪険にしたからだって。
それがトラウマになって、強く拒否をできなくなっているって。」

「確かにそうだけど、あれは相手が悪かったし、陸も子供だったから仕方が
なかったと思うの。
でも、今は大人で私と結婚していて、、、私が嫌な思いをするって、
わからないのかな。」

「安心しているのだろうね。
真っ直ぐなましろちゃんが自分の奥さんになってくれた、ということが。
変な自信になっているのじゃない?

それに自分は、道に外れたことはしていないという、思い込み?」

「馬鹿だなぁ、、、私だって嫌なものは嫌だよ。
嫉妬深いとか言われたくなくって、お互い忙しいから、どこかで息抜きを
しなくっちゃなんて、わかったふりをして、職場が一緒だから
あの奥さんはなんて言われたくないって、、、いい格好しいなのよ、私は。

陸は馬鹿、、、高校生の時から何も変わっていない。」

「ましろちゃん、ば〜んって言っちゃいなさい。目を覚まさせないと。
そうしないと、ああいう輩は、なかなか気づかなくって、いつまでも嫌な思いは続くよ。

うちの母みたいに父の浮気は病気って、放っておいたら、不倫の大恋愛されて
離婚されて、父の恋愛が破綻したら、ロメオメールがじゃんじゃんきて、
ロメオ電話か、、、」

「また、一緒になられたの?」

「また一緒になるには、前科がいっぱいで、学習能力もなさそうだからって
完全に切ったわよ。

それから、母は再婚して、、、相手の人は、父に比べると見てくれも地味で、真面目で、愛想も何もない人だけど
母のことは全身全霊で愛していて、私が反抗期で継父に反抗しても
項垂れているような人が、母に反抗したら、もうその辺にいられないくらいに
泣いて怒られて、、、

母は確実に学習をして、再婚した。
父は、世間様もご存知のように学習せずに、浮名を流して、売れない監督に
なって、人も離れていって、孤独な終わりを迎えた。

それでも
父が亡くなった時、母は父のために泣いていた。」

「、、、、、」

私はあの日シンガポールにいる父を想い、空を見上げていた母の姿を
思い出した。

「まぁ、うちの話はどうでもいいんだけど。」

美郷ちゃんは明るい声色に切り替えて、そう言った。

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