冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
ちょうど帰る予定の日だし、夕食を豪華にしたかったのかな? 短い文は彼らしいけど、どこか別人みたい。
時間が合えば一緒に食事をとろうという話だったのに、こうやって外食の予約をとって私との時間をわざわざ作るのは初めてだ。
昼食を公園で食べたときも、はじめは私から提案をして、わずかな休憩を共に過ごしただけ。
なんだか、普通の恋人のデートっぽいな。
そこまで考えて、思考が止まった。急いで頭を振って妄想を払う。
何を考えているんだろう。彼とは愛のない仮面夫婦なのに。期待をするのも浮かれるのも、結局自分が傷つくだけよ。
椿さんは、そんな感情これっぽっちもないんだから。
退勤と同時に、スマートフォンを開く。
【今からお店に向かうよ。先に着いたら入っておくね】
一応、SNSで連絡を入れるものの、返信はない。まだ仕事が終わっていないのかな。
化粧室で身なりを整えて、徒歩でホテルを出た。