冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
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 十二月に入った頃、椿さんは先に日本を発ち、一方の私は、樹さんの妻である美香さんにショッピングに誘われて、都内の商業施設に来た。

 美香さんと会うのは、椿さんが樹さんの家に転がり込んだあの日以来なので久々である。


「いいなあ、ラスベガスで新婚旅行。椿は藍さんを誘おうと思って、こっそり企画をしていたのね」

「そうみたいです。結婚した当初は新婚旅行はナシって決めていたんですけど、やっぱり嬉しくて」


 お喋りを楽しみながら、あらゆるテナントが揃った商業施設を歩いて、旅行に必要なものを揃えていく。

 女子会のテンションで買い物をするのは久しぶりだ。

 店舗巡りをしていたとき、一角だけ改装工事中の壁に囲まれているのが見えた。【アンジュ・休業】と紙が貼ってある。

 三日ほど前、アンジュの記事が速報でトップニュースになっていたのを見た。

 SNSでトレンド入りをしていたニュースによると、海外の有名パティシエの過去作に酷似したスイーツを販売していたことが明るみに出たらしい。

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