冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 しゃがんで入ろうとしたそのとき、繋いでいた手を強く引かれた。


「わっ!」


 水しぶきをあげてプールに飛び込む。

 お互い頭から水を被って、彼に抱き止められながら目を合わせた。


「いきなりびしょ濡れだな」

「もう! びっくりした!」

「ははっ、悪い。俺も浮かれてるみたいだ」


 子どものように顔を綻ばせた彼につられて、一緒に吹きだす。素直に笑い声を上げて、仕返しに心地よい温度の温水をかけた。

 少し泳いだ後、フラミンゴの頭が付いた大きな浮き輪を持ってきた椿さんがニヤリと笑う。


「乗ってみな。押してやる」


 無邪気にプールを楽しむのは、いつぶりかしら。豪華な施設を貸し切りで遊び放題って、こんなに幸せなのね。

 トロピカルフルーツを使ったジュースを、デッキチェアに腰掛けて飲むと、爽やかな甘さと酸っぱさが体に染み渡る。

 こうして、私たちは子どもに戻ったように、貸し切りのタイムリミットまで一時間たっぷり遊んだ。


< 192 / 202 >

この作品をシェア

pagetop