冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
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「ああ、最高。だいぶはしゃいじゃったわ」


 タクシーで宿泊するホテルに戻り、部屋のシャワーを浴びた後、スイートルームのソファに倒れ込む。


「楽しかったな。清掃が入るタイミングもあって、今夜しか時間が取れなかったんだけど、喜んでもらえて良かった」


 シャワーを終えてバスローブ姿の彼が、隣に腰を下ろす。

 ちょうど、ホテルの部屋から噴水ショーが見えていて、贅沢な空間にうっとりした。

 そのとき、隣から無意識に漏れたようなつぶやきが聞こえる。


「そういえば、一度だけ、ラスベガスに家族旅行に来たことがある。物心つく前、親父と母さんと三人で」


 そのときの記憶はあまり鮮明に覚えていないらしいが、唯一の家族旅行だったようだ。


「それからは、年に数回の公務の付き添いでしか親父に会わなくなった。大切な人を置いて世界を飛び回る親父みたいにはなりたくないと思ったのも、その頃からだったな」


 彼の言葉を聞いて、私は静かに口を開く。


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