冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
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《椿side》


 朝の日差しを感じて、ふとまぶたを上げる。

 質の良い布団が肌に触れて、夢と現実の境を彷徨いながら寝返りを打った。隣で眠るのは、小柄な妻だ。

 時差のせいもあってか、腕の中で寝息を立てている。

 寝顔だけで愛しくて胸がはち切れそうになる。俺って、こんなに恋愛ボケ体質だったのか?

 自分はずっと本気の恋愛はできないと思い込んでいたが、藍を抱いてから、その認識が間違っていたと実感した。

 いくら触れても足りなくて、淡白ではいられない。

 キスも好きだし、スキンシップも好きだ。藍が気持ち良くなるまで甘やかしたくなる。

 もう無理だと逃げられそうになっても、ゆるく捕まえて決して離さない。

 大事にしたいのに、余裕がないながらも俺に合わせようとしてくれる藍が愛おしくてたまらないのだ。


「んん……」


 身じろいだ藍が、向かい合う姿勢で目を開けた。まだ焦点が定まらないらしい彼女に微笑んで声をかける。


「おはよう」


 同じベッドで目覚めるのは初めてだ。

 昨夜の情事をやっと思い出したのか、意識をはっきりとさせた藍は、視線を逸らして「おはよう」とぎこちなく返事をする。

 恥ずかしがっているのか? 可愛い。小動物みたいだな。


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