冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


「まだ眠いだろ」

「うん……椿さんがいる……これは、夢?」

「寝ぼけてるな」


 しばらく抱きしめ合って、お互いの体温を感じ合う。

 腕の中にすっぽりおさまる藍は、素直に体を寄せてきた。


「なあ、夢みたいなことを言ってもいいか」

「うん…いいよ」


 やや舌ったらずな返事が聞こえた後、まだふわふわしている様子の彼女に話を切り出す。


「藍。俺と一緒にラスベガスに来ないか」


 その一言で、やっと目が覚めたらしい。大きな瞳を見開いて、俺の言葉を頭の中で反芻している。


「現地のランコントルホテルにも、カフェがある。異動することにはなるけど、ずっと、藍とこうやって朝を迎えたい」


 それは正直な気持ちだった。

 入籍のために帰国した頃は、彼女と離れて暮らす選択肢しかなかったし、正式な別居の理由ができてむしろ好都合だとも思っていた。

 でも、今は違う。

 ひとときも離れたくないし、欲を言えば、藍が許す日はいつも触れて愛を確かめ合いたい。価値のないと思っていた情愛に、ここまで自分が執着するとは想定外だ。

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