冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
目を丸くしてまばたきをしていた彼女は、やがてにこりと微笑んだ。
「私も、そうしたいなって思ってた」
「まだ寝ぼけているか?」
「ううん。本気よ。今さら、椿さんと離れられないもの」
愛しさが溢れて、より強く抱きしめる。
思考が鈍ってしまうほどの幸福が込み上げて、彼女を大事にしたい気持ちが強くなった。
夫婦になって、食事も寝室も別だった日々が信じられない。
仮面夫婦の掟を決めて、シェアハウスのごとく過ごしていた俺たちは、過去の傷をなめあって寄り添うようにひとつになった。
そして、お互い情を抱いて伝え合って、今、世界で誰よりも幸せな朝を過ごしている。
こんな惚気を思い浮かべてしまうくらい、俺は藍を愛しているんだ。
久我という名を嫌っていたけれど、久我でなければ真宮家と政略結婚できなかったかもしれない。
藍はすごいな。俺が生きてくる中で抱えてきた暗い感情や一族への劣等感を、全て浄化してくれるんだから。