冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
「今からミーティングルームの配置を変える?」
動揺に満ちた声がフロアに響いた。
クラブフロアの従業員が青い顔をして話し合っている。
「企業の方の参加人数が急遽増えたそうで
、用意していたスクリーンや機材コードだけでは足りないんです」
どうやら、直前になってトラブルが起きたようだ。皆、案を出しているが、うまくまとまっていない。
その時、低く甘さのある声が場の空気を変えた。
「ミーティングルームから、会議室に移しましょう。メインの画面はスクリーンにして、足りない分は使用可能なパソコンやタブレットを貸し出して対応すれば、問題ありません」
従業員達が、はっとひとりの男性へと視線を向ける。力強く冷静な口調で、中心で指揮を取る人物がいた。
ダークブラウンの短髪を綺麗にセットして、黒のスリーピーススーツにバーガンディー色の小紋柄ネクタイを締めた、スタイルの良いシルエットだ。
切れ長の目とスッと通った鼻筋、芸能人かと見間違うほど整ったマスクは、忘れもしない彼だった。
見つけた……! 久我さん!
五年経って、穏やかな紳士の雰囲気はそのままに、大人な色気を兼ね備えた男性へと成長している。
見惚れているうちに、彼は素早く指示を出していった。