冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
信じられない話に耳を疑う。つい、驚きのあまり呼吸が止まった。
「他に用事があったんじゃ」
「いいえ? 『真宮 藍さんは出勤していますか』って名指しで会いに来たのよ。ほら、この封筒を預かったわ」
手渡されたのは、シンプルな白地に金のインクで花の装飾が施された封筒だ。
中には一枚の便箋と、鍵が入っている。
【今夜、二十時に君を待っている】
綺麗でバランスの良い字が並んでいた。短文に込められた相手の気持ちが読めず、ただ困惑してしまう。
それに、同封されていた鍵については何の説明もなしだ。これは一体?
「待って。それ、ランコントルホテルのスイートルームの鍵じゃない!」
一連の流れを見守っていた上司のひとりが、興奮したように身を乗り出す。
「スイートルーム? これがですか?」
「一般の客室はカードキーだけど、クラブフロアの客室はお洒落な鍵で入るのよ。それに、部屋番号が書いてない。間違いなくスイートルームだわ!」