冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
頭の中に、ハテナがたくさん浮かぶ。
どうして呼び出されたのかしら。昨日、あんなことがあったのに……もしかして、失態に対してのお叱りとか?
エレベーターでの会話が蘇って青ざめた。もう気まずくて顔を合わせたくないが、無視するほうが恐ろしい。
「なによ、職場でイケメンホテル王と密会? ずっと彼氏はいらないとか言っておいて、付き合ってたんなら初めから教えてよね」
「そ、そんなんじゃありませんよ。本当に、心当たりがなくて」
「またまた〜」
勝手に盛り上がっている上司たちは、何を言っても誤魔化しとしか受け取らない様子だ。
どうしよう。あんなに嫌われた後じゃ、どんな顔をして会いに行けば良いかわからないわ。
迷っている間に、どんどん時は過ぎていく。
先に退勤していく上司たちの意味深なウインクとガッツポーズに、逃げ場をなくしていた。
仕方ない。ここは覚悟を決めて怒られに行こう。ところ構わず男を狙うはしたない女だと軽蔑されたら、少しは言い返したい。
深呼吸をして、クラブフロアへ直通のエレベーターに乗る。ランプが点滅して赤いカーペットの廊下に進む気分は、昨日までの私と百八十度違った。
納品に行くだけでもワクワクしていたのに、今は踏み出す足が重い。