冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
すると、高校生達が明るく答えた。
「お兄さん、四年前に真っ黒なデカいバイクに乗ってたんですよ。公園に停まってて、すげーってなったのがきっかけで、話すようになったんです」
「フルフェイスのヘルメットしてて、最初はお忍びで遊びに来てる芸能人かと思いました」
彼らの言う真っ黒なデカいバイクは、記憶の中のバイクと重なる。
「そういえば、言ってなかったな。休日は気分転換がてら、たまに走ってるんだ。今は、日本の実家に置いてある」
椿さんのセリフに、思い出が一気に蘇った。
まだ乗っていたんだ。別人だと誤魔化そうとしていたけど、やっぱり椿さんは私がニューヨークで出会った王子様と同一人物に違いない。
都内にある日本の実家は辰巳さんが所有していて、帰国した際に帰れるように、別荘として使っているようだ。
「お兄さん、またバスケしましょうよ」
「今からか? スーツだし、いつもみたいに時間は取れないぞ?」
「ちょっとだけ! 久しぶりだし、いいでしょう?」
彼らは使い古したバスケットボールを手にしている。そもそも、公園のバスケットゴールを利用しに来たらしい。
慣れた誘いなのか、椿さんは小さく息を吐いて口角を上げた。ベンチから立ち、外した腕時計を手渡される。
「悪い、少しだけ持っていてくれ」