冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 頷いた私に、彼はシャツをまくってネクタイを緩めた。ベルトを締めた腰の高さで、百八十センチ超えのスタイルの良さが際立っている。

 「少しだけだぞ。お兄さんは一応、仕事の休憩中だからな」と目を細めた椿さんに、高校生達は嬉しそうだ。

 フェンスに囲まれ、舗装されたコートに立った彼らは、ふたりずつペアになってゴールを狙う。

 興味本位で眺めるくらいに構えていたが、すぐに椿さんの動きに目が釘付けになった。

 しなやかで素早く力強いプレーは、素人の動きではない。経験者の中でも、高い実力集団の中に分類されるのではないかとすぐにわかるほど、キレが違った。

 ルールはよくわからないけれど、現役の高校生に軽く混ざれるほどの身体能力とセンスの良さは、息を呑むほどだ。

 ディフェンスやアシストに徹しているものの、パスのタイミングや視線の動きで相手を翻弄しているのが伝わってくる。

 次の瞬間、椿さんがシュートのポーズを構えた。綺麗な弧を描いて放ったボールがゴールに吸い込まれて、高校生の動きが止まる。


「うわあ! 入った!」


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