冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 頭を抱える相手チームの高校生は、本気で楽しそう。一方の椿さんも初めて見るほど生き生きしていて、涼しげに笑っていた。


「はい、おしまい。これ以上はシャワーを浴びることになる」

「ありがとうございました。またバッタリ会ったら、バスケ教えてください」

「ああ、またな。ほどほどに息抜きをしたら、テストも頑張れよ」


 手を振る高校生達と別れて、こちらへ戻ってきた椿さんは、少しも息が乱れていない。この人、本当に三十路?

 腕時計を返しつつ、持っていたお手拭き用のシートを差し出すと、「助かる」と受け取った。

 耳から首筋にかけて肌を拭く彼に、やや興奮して尋ねる。


「椿さんって、バスケットボールをやっていたんですか」

「エレメンタリースクールの頃から、就職するまで続けていたんだ。大学のときスカウトの話も来ていたけど、試合中に膝を怪我して全部無くなって、それっきり」


 スカウトって、すごい。怪我がなかったら、プロになる道もあったかもしれないってこと?

 本人にとっては乗り越えた傷らしいけれど、怪我は大きな挫折だったに違いない。


< 92 / 202 >

この作品をシェア

pagetop