冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
頭を抱える相手チームの高校生は、本気で楽しそう。一方の椿さんも初めて見るほど生き生きしていて、涼しげに笑っていた。
「はい、おしまい。これ以上はシャワーを浴びることになる」
「ありがとうございました。またバッタリ会ったら、バスケ教えてください」
「ああ、またな。ほどほどに息抜きをしたら、テストも頑張れよ」
手を振る高校生達と別れて、こちらへ戻ってきた椿さんは、少しも息が乱れていない。この人、本当に三十路?
腕時計を返しつつ、持っていたお手拭き用のシートを差し出すと、「助かる」と受け取った。
耳から首筋にかけて肌を拭く彼に、やや興奮して尋ねる。
「椿さんって、バスケットボールをやっていたんですか」
「エレメンタリースクールの頃から、就職するまで続けていたんだ。大学のときスカウトの話も来ていたけど、試合中に膝を怪我して全部無くなって、それっきり」
スカウトって、すごい。怪我がなかったら、プロになる道もあったかもしれないってこと?
本人にとっては乗り越えた傷らしいけれど、怪我は大きな挫折だったに違いない。