じゃんけんぽん
…『後出し』は、反則だよ。

恋愛が本当にじゃんけんの通りなら、ここまで辛い思いはしなかったのかな。もっとずっと楽だったのかな。

もしもじゃんけんの通りなら、私のこの恋は、誰が何と言おうと絶対に叶う。

『後出し』はじゃんけんにおいてのご法度だから。誰よりも早くから、深く、来海を愛しているのは私だから。

先手必勝が通じる世界なら、私のこの想いは必ず報われる運命なのに。

私はストンと階段のふもとにうずくまる。

「………どうして、私がこんなに苦しまなくちゃいけないの?」

周りを気にして取り繕うだけの普段の私ではない、真摯な響きを含んだ呟きだった。

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