じゃんけんぽん
思わず唇から落ちた本音は、誰に届くでもなく、宙に淡く消えていく。

…一途な想いが、一時の気の迷いに打ち砕かれるなんてことあってはならないよね?

ただひたすらに彼を愛することにしか脳がない私の前から、彼を連れ去らないで。神様はいつもちゃんと見てくれてるんじゃないの?

頰をさっと雫が伝ったその時、


「羽乃?」

突然、頭上から声が降ってきた。

振り返らなくても、誰かなんてお見通し。

走って近づく来海が、私の顔を覗き込んでくるものだから。

「え、泣いてんの」

ほらね、すぐにバレちゃう。

慌ててグシグシと目元を擦る私の手を、来海が「赤くなるから」とそっと取る。

サッカー部のユニホーム姿の来海の指先は、長時間外に居ただけあって冷え切っている。

その温度が、決壊寸前まで込み上げていた私の虚しさをスッと奪っていく。

次第に普段の落ち着きを取り戻す。

< 12 / 21 >

この作品をシェア

pagetop