じゃんけんぽん
「おーい来海!…ったく、あいつどこ行ったんだか。しれっと抜け出しやがって」
「サッカー部名物のサボり魔ぁ、監督に勘付かれる前に戻れよ〜」

廊下の奥で来海を呼ぶサッカー部員の慌ただしげな声が小さく響く。

ヤッベ、と来海がガバリと立ち上がる。

「そんじゃ羽乃、ほんとにどうしようも無い時は、いつでも俺を頼れよ」

やけにカッコいい置き言葉を残して立ち去ろうとする背中に、


「待って!」


しっかり届く明朗な声を乗せる。

階段の下から、驚いて振り返った来海をじっと見つめる。

私たちの間に流れているのは、いつかの無邪気な空気だった。あまりの懐かしさに、思わず目を細める。

< 17 / 21 >

この作品をシェア

pagetop